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CKGマンスリーコラム No.5

 

 

創造活動による2桁コストダウン活動

中小企業診断士 田中 義二

 中小製造業、特に下請企業にとっては、厳しい経営環境が続いている。この状況が当たり前となっている。親企業の海外進出による、量産部品の受注減少、廃棄機器からの部品の再使用、標準化による部品の種類の減少、競合企業連携による企業間部品の共通化。など絶対数が景気如何に関係無く減少傾向にある。これらの現象は、特に環境保護、省資源化、世界競争に勝つための、いわば必然的結果と言える。

 このような経営環境の中、期待する経営活動は、他社に出来ない差別化自社製品を開発し、実用化すること。生産は、中国など安い労働力のある国で造ってもらう事である。しかし現実は直ぐに中小企業がこの様に変身することは難しいことである。そこで本日は、当面の現実的な改善として、2桁レベルの大幅なコストダウン活動を提案する次第である。

 この提案の前提は、日常の細かい改善が貴社の小集団活動により実施されており、思いついた改善のネタが無くなってきたと言うことにしている。コストダウンの効果はご存知のように、売上でその分利益を出そうとすれば、その額の利益5%とすれば20倍必要になる。従って、企業への貢献は大きいものがある。

 一旦話題を切り替える。我々はどのような目で、店頭に各社の製品が並べられているものから、欲しいものを選択するのであろうか。価値の高いものを我々は選択する。

価値を数式で表すと、その製品に期待する機能・働きあるいは目的と値段の割り算を感覚的に計算し、その結果価値の高いと思うものを求める。製品の値段はメーカー側では、その機能・働きを実現する手段・方法により多くのコストが決まると言える。すなわち部品点数、材質などから。

 ここで、メーカーサイドのコストが出てきた。コストをいかに世界中の他社より安く押さえるか。企業にまだ体力が残っていれば人を減らす前に、このコストダウン活動をしてもらいたい。仕事が無かったら、作り過ぎをせず、その時間コストダウン活動を行ってもらいたい。

 まだまだムダな作業、動作など付加価値を生んでいない作業があれば、ムダはどこに発生しているか認識し、無くす活動をして欲しい。一説によれが付加価値を発生させている時間は1日の内、5%程度と言われている。例えば、加工で言えば材料が物理的変化をしている時間だけである。1秒のムダの動作を25000回繰り返せば、1日分の人件費分無駄に使ってしまう。

 さて肝心の2桁コストダウンをいかに実現するかである。このテーマは、社長が社員にいくら重要性を認識させて、説得しても実現するものではない。そのためのポイント、戦術を理解し、活用してもらわなければならない。

 先ほどの価値を高める方法として、今回はコストの改善に注目している。小さな改善は、現在の手段・方法に注目し、その代替案を発想すればよい。すなわち良く現場観察をして、ムダな作業、動作、不良の発生原因を見付け対策を打つことである。ところが2桁コストダウンは、現状の作業のやり方、現物を見ていては期待できない。いまの作業を観察し、改善する行為は、いまの作業は必要と認めての行為であり、そこからはその作業を無くせないかと言う発想に至るには難しい。大幅な改善活動には、現場、現物、現実直視はかえって大きな改善の邪魔になると思っている。

 さればどうすれば良いか。木を見て森を見ずとか、重箱の隅をつつくとか、枝葉に拘るなどと大局を見ない指摘ある。この改善活動の考え方は、いまやっている作業の目的は何か、何のためにやっているのか、機能・働き、目的に注目し、その目的を1つずつ上に遡っていき、より上流の機能、目的に注目しそれを果たす手段を発想することである。トヨタの改善の思想はなぜなぜを5回繰り返せと言われるように、真の原因に改善を加えるのと同じである。

 例えば、ある企業で4年ほど前数人居る営業マンの、お客様へ移動する時間を短くしたいという改善活動の要請があった。このテーマに対する改善策は、営業マンの分担を換えて、地域毎にするとか、都内ならば自転車を使うのもアイデアとして使える。しかしこのテーマをいくら展開しても、移動時間は0には出来ない。ところが移動する目的を遡ると、これはお客様と面談するための手段である。更に面談する目的は注文を取るためである。それならば、注文を居ながらにして取る方法を考えた方がはるかに期待効果は高い。この解決策として、今日では容易にインタネットのホームページの利用がアイデアとして出てくる。これに成功すれば、移動時間0、面談に要する時間も0となり、大幅なコストダウンが実現する。

 本屋の改善の例では、店を持つ目的を展開して行けば、店を持つのはいまでは絶対条件ではない。固定費をかけず、リスクを最小にして売上を伸ばす方法は、ご存知アマゾンドットコムが模範を示してくれている。

 この目的を遡る考え方は、機能を目的、手段で整理する機能系統図を作成する方法が使える。VEでも新QC7つ道具でも紹介されている。間接業務は、往々にして何をやっているか他人には分からないこともある。この間接業務の改善にも伝票の機能も含め、日常の業務を棚卸し、機能系統図に整理すれば、ビジネスプロセスのリエンジニアリングもできてこよう。

 世の中に新たに受入れられる製品・サービスはより、理想に近いものである。すなわち目的の一番近くに到達したものである。

 ひところ洗剤の容量革命があったが、洗濯洗剤は何のためにと問えば、汚れを落とすためと即答できる。この目的に注目しないと、なかなかその上流の洗剤を使わない超音波洗濯機の出現は無かったであろう。これを初めて製品化したS社は琵琶湖に近い事業所から生れたと聞く。彼らの夢は琵琶湖の水をきれいにしたいということであったという。洗剤の目的を遡り、いかに洗剤を無くすかを考えての結果であった。考えて見れば、超音波洗浄は工場内で良く目に付く、既に実用化されている方法である。この新聞発表後1ヶ月位して韓国企業が製品化した記事を新聞で見たが、特許はどうなっているのであろうか。

 アイデア発想はどうしようか。先ほどから機能とか目的を言ってきた。大切なのは物を見て発想するでは2桁改善の良いアイデアはでにくい。指し棒を見てレーザポイントの製品は生れにくい。「指定場所に注目させる」と言うように指し棒を機能に置き換えて、アイデア発想することが重要である。メンバーは「3人寄れば文殊の知恵」の通り、5から6名程度が最適である。リーダーは先に決めた機能に対し、メンバーにアイデアを出すことを勧める。小集団活動でもグループによるブレーンストーミングと称して、アイデア発想会が行われていると思うが、上手く機能していない方が多いのではないか。最大の問題は、

 アイデアが出た段階で、直ぐ良い悪いの評価をしてしまい、以降の連続したアイデア発想に結びつかないことである。重複してもそこで批判をせず、評価は別工程ですることが重要である。

 ただ中小企業では、アイデア発想のメンバーをそろえることも大変の場合があろう。参加者は、そのアイデア発想する対象に対し、未経験でも差し支えない。むしろ奇抜な思いもよらないアイデアが、未経験者に期待できる。異業種交流会のメンバーに参加してもらう、知り合いの企業から参加してもらう、お互いの企業でアイデア発想し合えば良い。

 アイデア発想の方法として、お奨めしたい方法に中山正和さんが開発したNM法がある。この方法は、最近手本となる方法に学ぶベンチマーキングと言う方法を、アイデア発想から得るものである。ベンチマーキングは、有名な事例として、アメリカサウスウェスト航空が、地上整備の時間を詰め乗客を乗せている時間を多くし、経営の改善を図ったが、そのベンチマーキングにインディー500レースの自動車整備の方法を参考にした。ベンチマーキングは、同業者に求めるのでなく、異業種に求めるのが、大幅な改善につながる。但しそこには、自社用に水平展開するテクニックが必要になる。

 このNM法は、「例えば〇〇のように」と問いかけ、いろいろなものを対象にする。例えば横浜商科大学の佐々教授等は、岩場の大きい蟹と小さい蟹の観察から中小企業の戦略論を発表している。その現象、メカニズムを当社に水平展開して実用化するわけである。

 下流の今の改善のアイデアは実用化が易しいが、効果は2%以下程度の期待しか持てない。それに対し、上流のアイデア発想は、当れば効果は2桁であるが、実用化は当然難しいことは承知しておく必要がある。発明として特許が取れるものが生まれる期待もかかる。全てやれば20%と保証されるものではない。当然時間を消費するリスクはある。しかしそのリスクを恐れて行動に移らなければ、今後その企業を市場は生かせてくれる保証はない。

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